昨日5月3日(土)より公開の『軍鶏 -Shamo-』を見に渋谷シアター・イメージ・フォーラムに行ってまいりました。オリジナル音声日本語字幕版での鑑賞です。主演の余文樂(ショーン・ユー)目当てですから広東語音声じゃないと困るのです。ただ、日本語吹替え版もなかなか豪華で、余文樂を小西克幸さんが担当したもよう。公開初日だから混んでいるかしら……とドキドキしながら見に行ったのですが、お客さんの入りは20人程度。それほど大きなシアターではないものの、104人収容なのでちょっと不安になってしまいました。
シアター・イメージ・フォーラムで映画を見たのは今回が初めてなのですが、上映中は飲食禁止の映画館なので、静かに映画に集中したい人にはもってこいだと思います。
【あらすじ】
裕福な家庭で何不自由ない生活を送っていたにも関わらず、両親を惨殺した成嶋亮。少年法の規定により少年院に送られた亮だが、そこで待っていたものは壮絶ないじめと虐待だった。親殺しの彼に居場所などなかったのだ。壮絶なリンチに絶望した亮が死を考えたとき、空手の教官として囚人の黒川健児が現れる。黒川は空手の教練の際、到底かなうはずも無い相手と亮を組ませる。必死の思いで繰り出した拳が相手を倒したとき、彼の中で何かが変わった。生きる術として空手を身に着けた彼は、少年院での日々を生き延び、外の世界に出る。自身の中に眠る野獣性の赴くままに喧嘩に明け暮れる亮。そんな彼の目に飛び込んできたのは、ショーアップされた総合格闘技リーサル・ファイト(LF)だった。LF王者菅原直人と戦いたい。LFを主催する番竜会も、親殺しの汚名を背負った亮の存在に注目していた……
ネタバレ感想は続きをどうぞ
公式サイト等で「主人公が壮絶な虐待を受ける」という情報を得ていたので、エグイシーンが出てくるんじゃないかと覚悟していたのですが、心配していたほどじゃなくて安心しました。でも冒頭からいきなりレイプされていたのにはびっくりです。
◆お目当て:石橋凌◆
今回、第1の目的は余文樂だったのですが、実は石橋凌さんのことも楽しみにして見に行ってました。最近のアジア映画は電脳通信状態、各国から集まった俳優がそれぞれ母語で台詞を言うというパターンが多いので、凌さんの声もそのまま楽しめるかなと淡い期待をしていたのですが、きっちり広東語に吹替えられていましたね。基本的に広東語音声版で満足なのですが、凌さんの芝居を楽しむには日本語吹替え版を見るしかないということか。
◆お目当て:呉鎮宇(フランシス・ン/ン・ジャンユー)
こんな生活なら死んだほうがマシだ……と亮が絶望したときに、空手の教官として黒川が現れます。『インファナル・アフェア 無間序曲』を見ていた人はみんな思ったはず、「お兄ちゃんが来た!!」(*1) タバコをすぱすぱ吹かしてだらんとしてるのに、実はめちゃくちゃ強い黒川さん、素敵すぎ。でれっと着こなした囚人服から覗いた腹筋が引き締まっていたのも良し。
空手の教練で組み手の相手を殴り飛ばし、また罰を受けることになった亮。猿轡をかまされ、拘束具でがんじがらめにされた彼に、石橋凌さん演じる教官が美味そうな晩飯を持ってきます(この場面、「どうだ〜〜食いたいだろ〜〜☆」っていう凌さんの意地悪い笑顔が最高です。いい芝居してます) 突っ込ませていただきたいことが一つ、
晩飯が香港料理!!(
角煮のせご飯+
青菜炒めみたいなやつ) 本当に日本なのか、ここ。ほかほかと湯気を立てる晩飯に顔をうずめ、悔しさに震える亮。その様子を隣の監房で察知した黒川が言います「縛られていても鍛錬はできる」 その夜、亮は心の中で突きの練習を繰り返すのでした。その日から、毎夜毎夜2人の
秘密特訓が繰り広げられます。お互い自分の監房に入ったままで。この当たりの描写は、道具立ては現代であるものの武侠映画的だなあと思いました。
空手を身に着け、少年院でもビクビクする必要がなくなった亮ですが、イジワルな教官の凌さんがある姦計を……語りたいけど、この映画のストーリー全部語りつくすとさすがにまずいので自粛。
◆謎:郭品超(ディラン・クォ)◆
この作品の売りの一つが、香港、台湾、日本から豪華キャストが終結したってところだったと思います。中でも台湾の人気スター、ディラン・クォの出演は目玉として語られていた気がしました。が、映画を見て思ったのは…… 「なんで出たんだろう、ディランは」でした。彼の役どころは、どうも映画オリジナルキャラクターらしい新番竜会代表の山崎。山崎が出てきたときは、「なるほど、番竜会と袂を分かった新番竜会に所属して、番竜会花形スターの菅原と戦うのね!!」と思ったのですが、そうは問屋が卸しません。なぜか番竜会会長、望月が道場破りに現れ、山崎はボコられます。それだけでもびっくりなのに、望月がさらなるびっくり発言を。「亮、山崎を倒したら菅原と戦わせてやる」
あの、山崎すでにボロボロですけど。あなたにかなり痛めつけられてますけど。
手負いの山崎を倒したところで、元々イーブンじゃないと思うのですが、そのまま二人の戦いに突入。亮は菅原と戦う切符を手に入れるために山崎の脚をへし折るのでした(えーーーーーっっ!?)
◆なぜ一人だけ北京語:劉心悠(アニー・リュウ)◆
生き別れの妹・夏美を追い求めるうちに、同じ名前を名乗る風俗店嬢に出会った亮。ここのシーンに物凄い違和感が……
亮:ハーメイ!(夏美の広東語読み) ハーメイ! 〈夏美! 夏美!〉
女:ウォー・チウ・シー・
シァメイ(わたしが夏美よ) 〈我就是夏美〉
なんで一人だけ北京語なの〜〜!? 演じるアニー・リュウが台湾出身だからっていうのもあるんでしょうが、それ言ったらディラン・クォだって台湾出身のはず。彼の台詞は広東語に吹きかえられていたと思います。石橋凌さんの日本語なんて容赦なく広東語吹替えだったのに。なんで彼女だけ北京語のままなの?? しかも一人だけ北京語なのに周りと問題なく意思疎通してるし(←最近のアジア映画にありがちな怪奇現象ですが)
◆眼福:竹やぶの決闘◆
これから映画を見る方の楽しみを削ぐといけないので間は割愛しますが、紆余曲折あって亮と黒川は再び拳を交えることになります。その決闘の場所が竹やぶ。セットで作った竹やぶなのか、香港にはああいう竹やぶがあるのか知りませんが、竹が束になって生えていて不思議なかんじ。青白い画面で非常に幻想的です。ここだけ武侠映画になったかと思いました。
※パンフレット掲載順 ( )は吹替えキャスト
成嶋亮 ショーン・ユー/余文樂(小西克幸)
山崎秀治 ディラン・クォ/郭品超(東地宏樹)
菅原直人 魔裟斗(魔裟斗)
佐伯院長 石橋凌(石橋凌)
黒川健児 フランシス・ン/呉鎮宇(山路和弘)
望月謙介 ブルース・リャン/梁小龍(浦山迅)
恵 アニー・リュウ/(朴璐美)
船戸萌美 テリー・クァン/關穎(川庄美雪)
成嶋夏美 ペイペイ/裴唯瑩(折笠富美子)
神尾陽子 中島宏海(中島宏海)
監督:ソイ・チェン/鄭保瑞
原作/脚本/エグゼクティブ・プロデューサー:橋本以蔵
それなりに面白く映画を鑑賞したのですが、最初から最後までどうしても納得できなかった点が一つ。この物語の一つのキーワードは「親殺しの大罪」だと思います。少年院に送られた亮は、他の受刑者および教官から親を殺した人でなしとして壮絶ないじめと虐待を受けます。でも少年院受刑者も看守もとんでもないロクデナシで、親殺しを大罪だと思うような倫理観を持ち合わせた人間には見えないんですよね。あの連中が「親殺しの人間に制裁を加える」というような大義のもとにいじめをするようには到底思えません。原作はどうなんだろうとWikipediaを見たところ、親殺しに加えて亮自身の内気な性格、虚弱な体格からいじめを受けた、とありました。それなら納得。
出所後も何かにつけて「親殺しの成嶋亮」と街中の人から侮蔑されるんですが、少年法で保護されている彼の顔と名前が世間に知れ渡っているのも疑問だし、親族間の殺傷事件が珍しくない昨今、日本の人たちってそんなに熱くないんじゃ……と思ってしまいました。
亮の師匠黒川は、三島由紀夫を思わせる作家の思想に教官し、首相を襲撃したことで終身刑に処された人物。劇中、亮は親殺しの大罪、黒川は首相襲撃の大罪を背負った人物というような台詞が出てきましたが、一般の人がそれを「許されざる大罪」と思うだろうかとやはり疑問に思いました。
映画が終わって映画館から出てきたら、「雑誌社のものなんですがアンケートお願いしてもいいですか? この映画を採点すると何点ですか?」という質問をしてこられてびっくりしました。映画の公開初日にこういうこと調べたりしてるんですね。ちなみにわたしは「60点」と答えました。もっと色をつけて答えたほうがよかったでしょうか。真っ正直でごめんなさい。
*1 『インファナル・アフェア』3部作の第2作目にあたる『インファナル・アフェア 無間序曲』で、余文樂はヤンを、呉鎮宇は異母兄のハウを演じていましたよね☆
テーマ:俳優・男優 - ジャンル:映画